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祓と祓い

令和6年6月18日

気まぐれ講話その二



▽「祓へ」(祓え)と「祓ひ」(祓い)の違い
          
「ハラへ」はハ行下二段活用動詞「ハラフ」の連用形で、意味を表す漢字で書くと「祓へ」です。これを現代仮名遣いで表記すると「祓エ」となります。贖いもの(祓ヘツ物、つまり罪を償うために差し出す物)を出して、罪を晴らす意味です。

一方、ハ行四段活用動詞「ハラフ」の連用形は「ハラヒ」で、漢字で書くと「払ヒ」です。これを現代仮名遣いで表記すると「払イ」となります。塵やゴミなどを振って散らしたり、すっかりきれいに片付ける意などに使います。

このように、「ハラへ(祓)」と「ハラヒ(払)」とは別語ですから、意味が違います。奈良・平安時代に、四段活用動詞に「払ヒ」はありましたが、「祓ヒ」はありません。同じく、下二段活用動詞に「祓ヘ」はありましたが、「払ヘ」はありません。

ところが、13世紀初め頃成立かと言われる仏教的色彩の濃い説話文学である『宇治拾遺物語』には、「法師陰陽師、紙冠をきて、はらひする」とか、「はらひどの神達は、法師をば忌み給へば」とあります。「ハラヒ」は「払ヒ」の意味なのに、それを「祓ヒ」と勘違い・混同した人が鎌倉時代に出てきたようです。この誤用が人々に広まったと考えられます。

以前に民放のTV番組で選挙違反を扱ったニュースキャスターが、「神社や神道は簡単で良いですね。罪を犯しても、ハラッタら仕舞いなんですから」と言っていました。彼は、贖いものをする意の「ハラフ・ハラウ(祓)」と、塵やゴミを振って散らす意の「ハラフ・ハラウ(払)」とを混同しているのですが、神職が「お祓い」という語を連発するところにも遠因があるのではないかと思ったものでした。


天神社宮司

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